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Tech Report  クリーンヒッター理論2

クリーンヒッター理論

『もし、バレルの長さが同じであれば、"クリーンヒッター"以上に命中率のよいハンドガンは存在しない』
これはクリーンヒッターを製作するうえでの最終目標であり、実際にそうなっている。真の意味での本格的競技用カスタム"クリーンヒッター"がどのようにして誕生したかは前号で書いた通りだ。今月はいよいよ核心に触れることになる。つまり、『なぜクリーンヒッターは命中率がよいのか?』を全てさらけ出そうというわけだ。ただしその前に予備知識として、いくつかの事実と謎を簡単に説明する必要がある。それは・・・

●グルーピング・アップのための2条件

グル一ピングをよくするには、ブレットにバラツキをなくすことだと前号の終りに書いた。ここではそのへんのことについて初めに説明してみよう。まず理解しやすい初速からだが、これは図1を見てもらえばいい。図は極端な例だけど、初速がバラツクとグルーピングは実に正直に上下方向にちらばる。実際には空気抵抗が飛んでいくタマに働くため、タマの重さや形状といった条件も上下方向のバラツキの原因となっている。まず空気抵抗を無視して考えてみよう。シューターからターゲットまで仮りに100mとし、初速100m/sでタマを撃ち出すと1秒後にターゲットに命中する。この間にタマは重力によって約5m落ちる。つまり命中させたい所よりも5m上を狙って打つといいわけだ。もっともリアサイトを上に上げて、狙った所に命中するようにサイトを合わせるのが普通だけどね。このサイト合わせは"サイト・イン"と呼ばれているのは知ってるね。では,初速が80,90,110,120m/sなどとバラツイたらどうなるか?表1がその答えだ。 どうですか?初速がバラツクと上下方向にちらばるでしょ。だからこそ初速は一定に保つ必要があるのだ。

第2に空気抵抗。もし初速が一定で空気抵抗がないとすれば何万、何億発とタマを撃ち出したとしてもマトの穴は1つだけしか開かない。しかし、実際には空気抵抗がタマに働くため、初速が一定だとしても弾着点(マトに開く穴)はバラツク。『でもまてよ。ちょっとおかしいんじゃないの?初速が一定ならば空気抵抗も一定じゃないか。つまり、タマは一点に集まるハズだぞ!』こんな反論も出るだろう。ウン、ウン。君はスルドイよ。でもね、初速が同じでも空気抵抗は同じだとは限らないのだ。これは図2を見ておくれ。タマにスピンがかかると、そちらへ曲がってしまうといったことがおこる。野球の変化球はこれの応用だ。このスピンの方向と曲がる方向が一致するというのは、ピンポン球を投げて実験すると誰にでも理解できる。またBB弾は1コ1コの形が違うため、(肉眼ではハッキリしない程度だか・・・)初速が一定でも空気抵抗は1発、1発異なるわけだ。もうグルーピング・アップのための2条件に初速と空気抵抗の2つが大きく関係していることが理解できたはずだ。もしも初速と空気抵抗が一定であれば、理論的にはタマは一点に集まるということになるのだ。

誤解のないようにここで実銃についてもちょっと触れておこう。実銃では先の2条件の他に、『ブレットの形状が一定であること』という条件も含まれる。何しろ1秒間に1000回転前後のスピンをライフリングによって与えられるのだから、少しでもブレットが変形したらタイヘンなことになる。図3を見てほしい。これはブレットがムチャクチャ変形した場合を考えて削ってしまってある。こうなるとこのブレットには遠心力が働くため、銃口を出た瞬間に銃口の向いている方向とは直角の力を受けるわけだ。(図4)ただし、それが上下左右どちらになるかは神のみぞ知るというもの。つまりブレットにキズ(変形)があるとグルービングはメタメタになってしまうワケだ。それに空気抵抗もブレットの変形によって変化するのでより一層ブレットの方向性は悪くなるのだ。遠心力の大きさは、(ブレットの重さ)X(円の中心と重心との距離)×(2πX回転数)2だ。ちなみにBB弾では遠心カの影響は考えなくてもよい。タマは軽いし回転数も低いからに。

●なぜバレルが長いと当るのか?

バレルが長いとよく当る。GUN誌のタークさんやジャックさん。我らがコンバット★マガジンの、イチロー兄ィやタロサのレポートで紹介されたことがある。ところが・・・。ど一して長い方がよく当るのかという理由を書いてくれない。(ぼくが知らないだけで書いてくれたことがあるかも)そんなこともあって、『バレルの長さと命中率の2つは、直接的には何の関係もない』という仮説を高校2年生のときに立てたが、誰1人として賛成してくれなかった。それならここで"バレルが長い方が当る"という理由を書き出し、直接は関係ないことを知らせるまでだ。2インチバレルのガンと6インチバレルのガンでは6インチバレルのガンの方が当る。 これは何かが違うからだ。何かとはバレルの長さに他ならない。

では、バレルの長さが違うと何が異なるのだろうか?他の条件が同じだとすれば異なるのは2点で、それは初速と単位時間でのブレットの回転数だ。バレルが長い方が共に高い数値となる。ではこの2つが高い数値であるとよく当るのだろうか?残念ながらそう簡単ではない。よく当るための条件は別のところにあるのだ。君はもう命中率をよくするためには何が必要か知っているでしょ。そうそう。初速とタマに働く空気抵抗の2つを一定にしてやればいいんだよ。ぼくは6インチバ1レルのガンよりも、2インチバレルのガンの方が初速と空気抵抗の2つ(もしくはどちらか1つ)のバラツキが大きいと考えた。そこで初速に目をつけたのだ。なぜかって?高校生にとって空気抵抗の問題は大きすぎたってワケ。初速というのは銃口から発射された時のタマの速さだ。2インチよりは4インチ。4インチよりは6インチのバレルの方が初速は高い。この初速というものを調べていくうちに、ぼくは不思議なことに気づいた。それは初速の差があまりないということなのだ。ちょっと考えると4インチとは2インチの2倍の速さ。6インチは2インチの3倍の速さでタマを発射しそうだが、実際には5〜10パーセントしか高くなっていない。(表2)これは何を意味しているのだろうか?

もう考えるまでもないね。タマを加速するためのエナジーであるガンパウダーは、タマが2インチ進む間にほとんど使い果されてしまっているわけだ。いや、本当は半分くらいしか使われていないのかもしれないが、タマが前進した分だけガスの広がる空間が大きくなったので相対的にプレッシャーは低くなる。初速は始めの2インチでほぼ決定されるといラことはわかった。でも、それが何だというのだ!マア,マア。そうアセラないでいこうよ。ぼくはここで"ほぼ決定"と書いた。"決定"とは書いていない。極端な例を出すけど、バレルがなかったらどうなるだろう。これだとガンパウダーの量、ブレットをクリンプする力のちょっとしたバラツキによって、初速は大きく変化してしまう。ところがバレルが2インチ、4インチ、6インチと長くなると、それら2つのバラツキを補正してくれるのだ。バレルが長いほどガンパウダーの持つエナジーを有効に使う。仮に6インチバレルで70%、2インチバレルで50%のエナジーを使っているとする。ブレットがカートリッジから抜け出す時の圧力のバラツキが5%あると、結局2インチバレルでは10%(5÷50)。6インチバレルでは7.1%(5÷70)のエナジーのバラツキということになる。このエナジーのバラツキの差はそのまま初速のバラツキとして現われてしまう。

このへんで結論だ。『実銃では、ブレットはバレル内で加速されるパーセンテージが高いため、バレルが長い方が初速を一定にするという働きをする。よってバレルは長いほど当る。ただしガス圧がブレットを加速できるまでの範囲内である』以上の結論は理論的なものであるため、実際にはバレルの振動やら何やらあって、長ければよいとは限らない。ここではハンドガンの世界での話だとしておこう。長物ではこうはいかない。ここまで話が進めばクリーンヒッターについても理解しやすいはずだ。ぼくは始めに『空気抵抗と初速が一定ならば良く当る』と書いた。次に『バレルは長い方が初速を一定にしてくれる』と説明した。つまり短いバレルであっても、何らかの細工をして初速を一定にしてやれれば長物と同じだけ命中するということなのだ。では、どんな細工をしたら短いバレルも初速を一定にできるのだろうか・・・。いよいよクリーンヒッターの秘密を明かすことになる。

●掟やぶりのハンドガン

バレルは短くても良く当るガンは作れる。これを証明したかったぼくは、いつの日かアメリカで自分の考えたガンをガンスミスに製作してもらおうと思っている。自信はあり理論的にも良く当るはずだが、イマイチ踏ん切りがつかない。製作を依頼するとなると、安くても200〜300万円は必要になるからだ。何とか安上がりに自分の仮説を実証する方法はないだろうか・・・。そんな思いでいたところヘエアーガンのブームが巻きおこった。エアーガンの弾丸発射メカニズムは,実銃とまったく同じだと考えてよい。そこでマルゼンのハンドガンであるM59をべ一スにカスタム化することにしたのだ。撃って当る銃を作ろうと思ったら、マルゼンのハンドガンは素材としてベストだM59、P7M13、P226。この3挺は文句ない製品だ。今からクリーンヒッターを作るとしたら、P226かP7M13を選ぶと思うが、初めてクリーンヒッターの製作を手がけた時にはM59だけしかなかった。何度も書いているが、命中率を良くしようと思ったら、空気抵抗と初速を一定にすればよい。では、どうしたらエアーソフトガンから発射されるBB弾が2条件を満足するようになるだろうか?その前に、エアーソフトガンでは、どのようにして初速が決定されているのか知る必要がある。『彼を知り己を知れば、勝ちすなわち殆からず。天を知り地を知れば、勝ちすなわち全うすべし』ぼくは孫子のこの言葉が好きだ。エアーソフトガンと実銃では発射メカニズムは同じだが、弾丸加速方法は違っている。

エアーソフトガンではBB弾がカートリッジから抜け出す瞬間に初速は決定していると考えてよい。バレル内では抵抗(抜弾抵抗)はないのだ。ゼロじゃないけど実銃と比べたらゼロみたいなものってことだね。実銃は"バレル内加速方式、エアーソフトガンは"パッキン加速方式"で弾丸を発射している。初速のバラツキをなくすためには、バレル内加速方式でないとダメ。パッキン加速方式はOインチバレルだと考えてもらえば理解しやすいんじやない。バレル内加速方式ということは、抜弾抵抗を作らなければならない。抜弾抵抗を作る・・・。どうすればいいのだろうか?

ぼくは始め、バレルに手を加えることを考え試作してみたが、期待したほどの結果は得られなかった。5mで5センチ以内が目標だったのに対し、10センチ程度でしかなかったのだ。ノーマルのまま(何も手を加えていないM59)では5mで30センチ前後だから、10センチでもマズマズかもしれないがそのレベルでは"クリーンヒッター"の名にそぐわない。やはり5mで5センチじゃなきゃね。どうすれば抜弾抵抗が生まれるんだろう・・・。抵抗ということは、無理をしてBB弾がバレル内を通過しているということだから・・・。ウーム、ウーム。と考えること1週間。ついに解決策を見つけだした。 変形するBB弾を使えばいいのだ。変形するBB弾とはゴム製だ。このBB弾よりほんの少し内径の小さなバレルを用意すれば実銃とまったく同じ条件になるではないか!これでバレルの問題はクリアーした。

次にカートリッジだ。マルゼンのカートリッジにはバラツキがある。これはBB弾をゴム製パッキンで固定しているためだ。正確にいうと、ゴムとBB弾の組み合わせにバラツキが出やすいということになる。BB弾をカートリッジに押し込むとき、0.1mmでも深さが違うと初速は変化してしまうのだ。最初はカートリッジ内のゴムに薄くグリスを塗ってみた。つまり抜けやすくして、ゴムからBB弾が抜ける際の力のバラツキを少なくしようと考えたわけだ。これは良い結果が得られたが、グリスを塗るのは何ともメンドーだった。いろいろと試し、最終的にグラスチューブ利用に落ちついた。SS9をBB弾化するときと同じ方式だ。これだとカートリッジからBB弾が抜け出るのに必要な力は小さくてすむ。バレルとカートリッジのカスタム化により、BB弾の初速は一定となった。BB弾のデキも良いので空気抵抗も一定だ。特にBB弾に変なスピンがかからないのがよい。

ぼくの理論をそのまま形にしたクリーンヒッターは、5mで5センチのグル一ピングを可能とした。サバイバルゲーム用品を販売している"ウッドランド"のクリーンヒッターは、ぼくのアイデアがそのまま組み込まれている製品だ。1人でも多くの人に射撃の面白さを知ってもらいたいという気持ちに、ウッドランドの店長サンが賛成してくれたので製品として発売した。自分の願いは一応果たせたことになるが、夢はさらに膨らんでいる。それは本格的な競技用ハンドガンをメーカーさんに作ってもらうことなのだ。射撃の持つ本当の楽しみを日本中のマニアに味わってもらいたいから・・・。

ぼくが本格的競技用ハンドガンとして認めるのは、全長300o以内で10mで3センチのグルーピングを出せること。これは少し難しいかもしれないが、不可能だとは思えない。ハッキリいってしまうとその競技用ハンドガンのデザインと基本的な内部メカニズムの設計は完了している。10mで3センチ。これなら楽しいし、オモチャでありながら射撃の奥深さを知る手助けくらいはできるはずだ。やたらとパワーを上げて空カンをヘコませたり、単に飛距離を延ばすだけなんてヤバンで時代遅れだよ。そんな遊び方ではアキもくるし、危険も増すばかりだからね。

今後はシューティングマッチが盛んになると思うし、そうなれば"当る銃"が要求される。外観を実物に近づけるのもいいが、やはり当るということが第一であって、それ以外はオマケのはずだ。 外観やメカニズムの追求はモデルガンの世界。当らなければエアーガンではないという考えがマニア全員に広がる日は近い。この号が出たからには「ハンドガンはバレルが短いので当らない」、などという言い訳は通用しない。メーカーさんにはガンバッテもらうことになる。

来月はいよいよ最後。今後のエアーガンの目指すべき方向は何かについて書こうと思ってます。それはやっぱり高命中率ガンなんだけど・・・。まあ来月号では常識なんていう言葉はブッ飛んじゃうと思うよ。何しろバレルの長さ3センチで5mで5センチのグルーピングを楽々と出しちゃうカスタムバレルが登場するからね。それにもう1つ。ぼくの考えた競技用ハンドガン"スコアーマスター"も発表するかんに。全長300o以内。10mで3センチのグルーピング・・・。男のロマンですよ。オマケとして、50m先の敵も狙撃可能なカスタム・ブレット(競技用ブレット)も紹介したい。期待しててよ。

 


PART1:クリーンヒッターの秘密コンバットマガジン1985年11月号より転載

PART2:グルーピングの謎を追うコンバットマガジン1985年12月号より転載

PART3:クリーンヒッター・マークUコンバットマガジン1986年1月号より転載

番外編

クリーンヒッターの秘密総集編 PART1
コンバットマガジン1986年8月号より転載

クリーンヒッターの秘密総集編 PART2
コンバットマガジン1986年9月号より転載


※20年前の記事ですので現在では間違っていることもあるかもしれません。が、理論的に追求する姿勢は今も昔も変わらないと思います。



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